肩関節の疾患とそれに伴う手術について
肩の痛みは、いわゆる四十肩や五十肩のみならず、様々な疾患が原因で生じます。よく、「四十肩/五十肩だから放っておいたら治る」ということを耳にしますが、放っておくと症状が悪化し苦しむ期間が長くなるばかりでなく、治療がより難しくなる事もあるため、適切な時期に適切な治療を行うことが大切です。まずは、自分で診断するのではなく、診察を受けていただくことをおすすめします。

肩関節拘縮(こうしゅく)
肩の炎症が持続したり、痛みを我慢して使い続けたりすると、関節が硬くなり関節の可動域が制限されることを拘縮といいます。肩関節の拘縮が起こると、睡眠時痛みで目が覚める、手が上がらない、頭が洗えない、服の着脱がしにくいなど、日常生活においてさまざまな障害が出てきます。こうした方の症例の多くは、注射やリハビリで改善したり、自然と治ったりしますが、中には改善しないケースもあります。
当院では、そういった肩関節拘縮に対し以下の治療を行っています。
非観血的関節授動術(ひかんけつてきかんせつじゅどうじゅつ)
腕神経叢(わんしんけいそう)ブロックという痛み止めの注射をして、硬くなった関節を剥がして柔らかくする処置。外来で受けることができるのがメリットです。入院の必要はありませんが、術後はリハビリ通院の必要があります。
関節鏡視下関節包解離術(かんせつきょうしかかんせつほうかいりじゅつ)
全身麻酔をし、関節鏡を用いて硬くなった関節包(関節を包んでいる袋状の膜)を切開する手術です。数日~2週間程度の入院が必要で、退院後もリハビリ通院が必要になります。
腱板断裂
腱板とは、上腕骨骨頭を覆う4つの筋の総称。肩関節を安定させる働きがあり、これが切れる(断裂する)と肩の動きが不安定になったり、力が入りにくくなったり、痛みが出たりすることがあります。
腱板断裂の原因は大きく分けて転倒などのケガによる外傷性、加齢によって筋が弱くなり自然にすり切れる変性があります。断裂しても痛みが伴わない場合もありますが、注射や飲み薬などの投薬、リハビリなどを行って症状が改善すれば手術はしませんが、痛みが続く場合は手術を行います。

関節鏡視下腱板縫合術
アンカーと呼ばれる糸のついたネジを用いて、断裂部を修復する手術です。手術はすべて関節鏡を使って行うため、1~2㎝程度の小さい切開で済むのが特徴です。関節鏡を使用することで、関節内部の細かな部分の観察や、正面から見ても分かりにくい関節の裏側まで診断することが可能です。

変形性肩関節症
変形性肩関節症とは、上腕骨や関節窩などの肩関節の骨が変形する疾患です。
ヒアルロン酸や局所麻酔薬の注射、飲み薬、リハビリなどで痛みが取れない場合は、人工肩関節置換術を行います。
解剖学的人工肩関節置換術
変形性肩関節症のうち、腱板が残っている、もしくは断裂が小さく修復可能な場合、通常の肩関節を模した人工肩関節に置き換える手術を行います。
リバース型(反転型)人工肩関節置換術
腱板の断裂が大きくなり修復が困難となった場合や、腱板断裂を伴う変形性肩関節症に対しては、リバース型人工肩関節置換術を行います。